地域と連携、やさしくて温かみのある病院に(都農町国民健康保険病院|桐ヶ谷新院長インタビュー)
4月1日から、都農町国民健康保険病院の新院長に就任した桐ヶ谷大淳先生に、これからの展望について、お話を伺いました。
地域に開けた病院
–都農町の印象は?
総合診療医として、都農町国民健康保険病院に常勤して2年になります。
総合診療医として、外来・入院・在宅とさまざまな診療現場で、患者さんのニーズに対応することを心がけてきました。その中でも人生の最終段階までを含めた在宅医療サービスを増やすことを意識してきました。2年間やってみて、在宅医療の需要はまだまだあると感じていますので、これから介護関係者や介護施設とより連携しながらやっていきたいと思っています。
コロナ禍もあって、地域での活動は十分にできていませんが、立場が病院長に変わることで、やりやすくなることもありそうです。より病院の外に出ていって、町民の方々との接点を増やしたいと思っています。
-新院長としてイメージする新しい病院像は?
地域に開けた病院です。
そのための具体策として、早速、病院ホームページのリニューアルに着手しています。
病院は行かないとどんなことしているのか分からないところだと思いますので、健康や医療に関する情報発信を増やし、町民のみなさまにとってプラスになるようなとりくみを実施していきます。
「つのまる」の『けんこう日記』も情報発信の一つとして、より有効活用していけるといいなと思います。
職種を超えて連携する病院
–医療や介護に関わる多職種の連携は?
多職種連携で一番連携しにくいのは医者だとよく言われます。
「ちょっと敷居が高い」「質問しにくい」「過去に医者に嫌なことを言われた」とかあるんじゃないですかね(苦笑)。
あと、医療関係者と介護関係者で専門用語が違うということもよく言われます。
思考回路にも違いがあるので話を合わせていくのがなかなか難しいのかもしれませんが、自分の土俵の中だけでやっているとわかり合えないと思います。
わかり合うためには、まず患者さん、介護利用者さんを中心に、その人にとってプラスになることをお互いに考え合い、意見を出し合って、歩み寄っていくということが大事です。
あとはプライドを持ちすぎない方がいいんじゃないですかね。
自分の職種にこだわりすぎてしまうと、その職種を超えて何かいろんなことをやっていくっていうのが難しくなります。
「何かちょっと困ったら、とりあえず都農病院に行ってみよう!」を目指していきます。
―医療と介護の連携、具体的には?
医療的にそれほど問題なくても、認知症があったり、足腰が弱くなったりとかで生活の困りごとが増えている高齢の患者さんに、それは医療の問題ではないと突っぱねてしまわずに、ソーシャルワーカーや地域包括支援センターにおつなぎして、相談したりアドバイスや解決策を話し合っていけるようにしていかなければなりません。
ときどき入院、ほぼ在宅
「ときどき入院、ほぼ在宅」を実現するのが、地域共生社会、地域包括ケアの中で重要とされています。
具合が悪くて医療的な必要性があるときは時として病院に入院してもらいますが、リハビリして元気になったら在宅、自宅に戻って地域で元気に過ごしていけるお手伝いをしていくのが都農病院でも求められる役割だと思います。
居住系施設のなかで、都農町にグループホームはいくつかありますが、有料老人ホームがちょっと少ないのかなと思っています。介護の程度やいろいろな状況によって、自宅で過ごすことがかなわない場合もあり、自宅に準じた居住系施設が増えてくことは、生涯、都農町で穏やかに安心して暮らしていくために必要です。
居住系施設に入る人は医療依存度も高くなりますので医療者もお役に立ちながら、楽しく過ごしていけるお手伝いをしていきたいと思います。
オープンに話し合うチーム
-新院長としての役割は?
総合診療医も院長も、その役割は指揮者に例えられるのかなと思います。
指揮棒を振って、いろいろな楽器の奏者から少しでもいい音色を出してもらえるように調整するみたいな。
病院をマネジメントしていくことは、10前後ぐらいある多職種の専門家をどう連携して、患者さんにとっていいサービスを提供できるようにするかです。
そのためには、なるべくオープンに、言いたいことを言ってもらえるような環境づくりをしていかなければなりません。
地域や患者さんにとってプラスな意見であれば、どんどん採用しながら、良い風が吹いていくようにしていきたいですね。
退院後の生活までサポート
–今後の課題は?
病院の職員には、より一層、患者さんの方を向いて仕事をしてもらいたいです。
患者さんにとって、地域にとって、大事なことは何かを考えながら働いていきましょうと声がけしていきます。
患者さんに何か問題が起きたとき、どういうふうに解決していこうとか、関係者が一同に集まって話し合う場を増やしていこうと思っています。
病棟では退院がゴールになってしまいがちですが、患者さんにとってはそこで終わりではなく、退院した後の生活の中でちゃんと過ごしていけるかが大切です。
入院中から在宅医療部門と連携をしていれば、退院後の生活をスムーズにしやすくなります。
患者さんは退院するときにこういうことができるようにしておく必要があるとか、これは介護関係者にアドバイスしておかないといけないよねとか。
「入院部門」と「外来部門」と「在宅部門」をうまく連携していけるような情報共有のしくみをつくっていきたいと思っています。
地域に根ざして共に育つ
-新院長としてやりたいことは?
1つめは、職員一人一人が仕事に充実感とやりがいを持ちながら働けるようにすること
2つめは、より在宅医療を充実させていきながら、地域に根ざした病院にしていくこと
3つめは、周りの医療機関との連携をしっかりと行い、この地域で必要とされる役割をしっかり果たしていけるような病院にしていくこと
今まで以上に、身近な存在で、やさしく温かみのある病院と思っていただけるように努力していきます。
-新院長が大切にしている言葉は?
「共育」です。
患者さんや介護利用者さんのために、医療や介護に関わる人々が地域の中で連携して、共に育っていける環境やしくみをつくっていきたいと思います。
この文章を書いた人
桐ケ谷 大淳(きりがや だいじゅん )
大阪府出身。2001年、滋賀医科大学卒業。社団法人地域医療振興協会にて地域志向型研修を受け、へき地の診療所で所長を務める。2012年に子育て環境を考えて、妻の実家のある宮崎県へ異動。地域の病院での在宅医療部門の立ち上げや、大学での教育に携わり、2020年4月から都農町にて勤務。ワーク・ライフ・バランスを良くしていくことが、ここ数年の課題。最近の趣味は、子どもたちとサッカーをしたり公園で遊ぶことです。