“誰も取り残さない” 高齢化40%のまち都農町が目指す地域共生社会とは 〜介護・地域包括ケア編〜

今ご覧いただいているローカルけんこうメディア「つのまる」の名前には、“つの町とまるごと繋がる・つの町をまるーく支える・つの町がまるっと見守る”という意味が込められています。

そしてこの名前は「地域包括ケア」というシステムに由来しています。

これは厚生労働省が構築を推進しているシステムなのですが、「初めて聞いた」という方もいらっしゃるかもしれません。

実はこの地域包括ケアこそが、都農町が目指す地域共生社会の大事な軸となるものなんです。

今回はこの地域包括ケアがどういったシステムなのか、都農町はどのような地域共生社会を目指しているのかなどについて、前回の記事と同様に、第7回つの未来会議の内容を交えながらお伝えします。ぜひ最後までご覧ください!

つの未来会議とは…

“次世代へのバトンを託す”がテーマ。民間企業や若い世代の人たちがまちづくりの“当事者”として議論を交わす場を目指し、都農高校跡地で開催しています。参加費は無料。主催はまちづくりに関するさまざまな事業を展開している株式会社イツノマです。

前回の「〜総合診療医編〜」をまだ読んでいない!という方はこちら

誰も取り残さないために、まるーくケア

冒頭にもお伝えした通り、「つのまる」というメディア名は“地域包括ケア”に由来しています。

地域包括ケアとは…

地域における医療・保健・福祉などのサービスの「多職種の専門家」が一致団結!

町民一人ひとりに向き合い、誰もが自分らしい暮らしを実現できるよう、連携しながらお手伝いする仕組みです。

高齢者や障がい者、子ども、生活に困っている人。誰も取り残さないために、地域をまるーく支えます。

(つのまるトップページより抜粋)

文章だけでは具体的にどういったサービスが提供されるのか、イメージが湧きにくいかもしれません。つのまるでは地域包括ケアを分かりやすく伝えるために、実際のエピソードをもとにした5つの事例を“漫画”で紹介しています。

前回の記事に登場した宮崎大学医学部の吉村教授は、この漫画を医学生への教育に使用されているのだそうです。ぜひこちらも読んでみてください!(事例漫画はこちら

暮らす人・利用する人・働く人、みんなが幸せになれる場所を作りたい

第7回つの未来会議に講師として登壇された、株式会社ハラケアシステム・代表取締役の原秀直さん。三股町で有料老人ホーム「たでいけ至福の園」をはじめとした5つの事業所を展開されています。

原さんが社会人になって初めて就いた仕事は警察官。そこから法律事務所職員医療法人・社会福祉法人の人事責任者を経て起業という異色の経歴をお持ちです。

原さんが医療・福祉業界に持っていたイメージは、「人を幸せにする・助けるところ」でした。しかし、人事責任者としていざ働き始めてみると、イメージとはかけ離れた世界が待っていました。原さんは職員から出てくる言葉の数々に衝撃を受けます。

「人が足りない」「もっと患者に寄り添えると思っていたのにそれどころではない」「給料が安い」「こんな施設に自分の親は入れたくない」「辞めたい」

そして患者や利用者から聞こえてくるのは「家に帰りたい」「ここは地獄のようだ」「生きていても仕方がない」という声。

原さんは「ここは一体何のためにあるのだろうか。誰も幸せにできていないじゃないか」という絶望にも似た思いに駆られました。

そうした思いを持ちながら働いていたある時、病院で入退院の調整などをおこなうソーシャルワーカーの方から「うちの病院のように医療依存度の高い方を受け入れてくれる施設がない」という話を聞きます。原さんは「都城にはすいている病院があるのに。本当?」と驚いたのだそうです。

厚生労働省のホームページには次のような記載があります。

団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現していきます。

これを読んだ原さんは「都城には重度な要介護状態の方を受け入れる施設が足りていない。まったく実現できていないではないか!」と感じました。そして、「よし!それならば私が作ってやる!」と決意。

せっかく自分で介護施設を作るのだから、病院が退院できると判断した方であればどのような方でも受け入れることができ、暮らす人・利用する人・働く人、みんなが幸せになれる場所・理想の地域包括ケアを実践する場所を作ろう。

そうした場所を作ってこそ、人生をかけて起業する意味がある。

これは創業当時から変わらない原さんの思いです。2015年に12名でスタートしたハラケアシステム。今では県内外から集まった95名のスタッフが働いています(2022年11月時点)。

困っている人を見捨てない社会

原さんが考える地域共生社会とは、「困っている人を見捨てない社会」。そして、それを実現するために必要な要素は「医療・福祉・介護」の3つだといいます。原さんは都農町に目指してほしい地域共生社会について、次のように話されていました。

私が都城市・三股町で開業した当時一番困ったのは、“医療との連携”でした。私のような新参者が突然施設を作っても、訪問診療に協力してくれるドクターは誰もいませんでした。

しかし、すでに都農町には総合診療医や看護師などがいる、都農町国民健康保険病院があります。充実した医療体制があるというのは、圧倒的なアドバンテージだと思います

都農町には吉村教授をはじめとした素晴らしい人材も集まってきていますし、特別養護老人ホーム・グループホーム・訪問看護・訪問介護等、いろいろなものが揃っています。

今ある資源を生かしつつ、足りないものをどう補いながらチームで地域包括ケアを実践していくか。都農町であればできるはずです。私は「うらやましいな」と思いながら関わらせていただいています。ぜひ住民の皆さんも考えてみてください。

また、河野正和都農町長は今後の医療・介護業界について次のように発言されていました。

医療費や介護費が膨らんでいることが国家的な課題となっていますが、私は単に医療費・介護費を下げるだけではいけないと思います。

医療・介護の現場から新しい価値観やエネルギーを作り出すことができなければ、国民は幸せになれないと考えているからです。

分かりやすく言うと、お世話する人・される人という立場ではなく、「誰かのために」という思いや、「お世話されたことでお世話した人も元気になることがあるんだ」という気づきがお互いにある。

これからはそういった新しい考え方を現場から作り出していくことが大事ではないでしょうか。

前回から2回にわたり、都農町が目指している地域共生社会に関する記事を掲載いたしました。

都農町がおこなっているさまざまなとりくみについて、知っていただくことができましたでしょうか。

この記事が地域共生社会について少しでも考えていただくきっかけとなれば幸いです。

前回の〜総合診療医編〜はこちら

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