デジタルで人とつながる楽しさを教える「d-サロン」
町内の高齢者や子どもたちがデジタルと友だちになり、デジタルで友だちを増やすことを目的とする事業「デジタル・フレンドリー」。この事業では、都農町とつの未来財団が連携し、次の4つの施策を推進しています。
- 町ホームページのリニューアル
- 光回線を町内全域に敷設
- 希望する全世帯へタブレット端末を配布
- 町民のデジタル活用をサポート
今回はこの内の「町民のデジタル活用をサポート」の施策に含まれる、高齢者向けのタブレット講習会「d-サロン」を見学させていただき、受講者や関係者の方々にお話を伺ってきました。
デジタル化が進むことで、子や孫世代も楽に
d-サロンでメイン講師を務めている、つの未来財団の菅原さんに、町民がタブレットを持つ意味を伺いました。
全世帯がタブレットを持つことで町のデジタル化を進めやすいです。町民の足並みを揃えることができます。
町民の皆さんがデジタルを介して色々なサービスを受けることで、子どもや孫世代も楽になります。都農町は人口の約4割が高齢者。1人が支えられる人数には限界があるため、デジタル化は避けられません。
固定電話やスマホを持っていない方もいるので、防災の側面も。避難の際に携帯することでNHKニュースなどで情報を得ることができます。
コロナ禍でも離れている家族や友人とつながることができるデジタル。菅原さんはその楽しさを知ってほしいと話されていました。
使い方だけでなく「楽しみ方」を教えてくれるd-サロン
d-サロンの「d」は、digital(デジタル)の頭文字です。年に4回を目標に、町内の全44自治会をめぐり、タブレットに初めて触れる方でも楽しく使い始められるような講習会を開催しています。
d-サロンでは単にタブレットの操作方法を教えるだけでなく、脳トレゲームで遊んだり、LINEアプリでビデオ通話したり、家族にメッセージを送ったりといった、楽しみ方を教えています。
デジタルと友だちになり、デジタルで友だちを増やすというデジタル・フレンドリー事業の目的通り、タブレットが人とつながるツールであることを教えてくれる講習会だと感じました。
つの未来財団ではd-サロンの他にも希望者の自宅に訪問して使い方を教えたり、少人数制のタブレット相談会を開催したりと、人口約1万人の小さな町だからこそ実現できる、手厚いサポート体制をととのえています。
タブレットは「おもしろい」
d-サロンに参加されていた、88歳の長友進さんにお話を伺いました。
ー普段タブレットで何をご覧になっていますか?
毎日NHKのニュースを見よる。あと夜中に目が覚めて眠れん時にも見るとよ。見よったら自然と眠れる。今まで眠れん時は本を読みよったけど、最近はタブレットを見よるよ。
ーd-サロンに参加されたのは何回目ですか?
2回目。私が老人会長しよるときにもするはずやったけど、新型コロナがはやったからせんかった。だから2回目やね。
ー参加されてみていかがでしたか?
おもしろいね。このモザイクみたいなやつ(QRコードリーダー)の使い方が分からんかったとよ。だから今日教えてもらった。よし、もう1回やってみようかね。
普段は息子さんと一緒に育てているミカンの手入れで山に上がったり、ニホンミツバチを育てたりしているという進さん。
何ごとにも「おもしろい」と楽しみながら取り組む姿勢が、進さんが若々しくいられる秘訣なのかもしれません。
若者から学ぼうとする姿勢が素敵でした
この日は東京都にある新渡戸文化高校の生徒さんも一緒に見学していました。
新渡戸文化高校は修学旅行を廃止し、生徒さんが自ら行きたい場所を選択する「スタディツアー」をおこなっています。このツアーを通して、日本が抱える人口減少などの課題や、その解決に尽力する大人たちと出会います。
まちづくりホステルALAを拠点にしたスタディツアーの一環でd-サロンを見学した2人に、感想などを伺いました。
ーなぜd-サロンを見学しようと思ったのですか?
まちづくりに興味があったからです。また、スタディツアーでは現地の方々と交流したいと思っていたので、こちらの見学を選びました。
ー実際に見学されてみていかがでしたか?
自分より若い方によく分からないことを教わったり言われたりするのは自分だったら嫌かもしれないけど、皆さんはとても柔軟で、若者からしっかり学ぶ姿勢があって、素敵だなと思いました。
もっと排他的かと思っていましたが、向こうからも話しかけてくれて、すごく楽しかったです。d-サロンを見学して、都農の皆さんのあたたかさをより一層感じました。
ーもし自分のおじいちゃんやおばあちゃんが住んでいる地域でこのような取り組みをおこなっていたら、参加してほしいですか?
身内にはやはりいつまでも元気でいてもらいたいし、こうした会は他の方とのコミュニケーションのきっかけにもなるので、積極的に参加してほしいなと思います。
受講者に「すごい」「ナイス」といった声をかけるなど、盛り上げ上手だった生徒さんたち。受講者の方々もまるで自分のお孫さんと接しているかのように嬉しそうでした。サロンの会場は、あたたかい空気に包まれていました。