人口減・高齢化・医師不足の町、総合診療医の役割とは?

宮崎大学医学部の
桐ヶ谷大淳医師(右)、䅏田一旭医師(左)

都農病院には3名の「総合診療医」が常勤しています。

みなさんは、この「総合診療医」という言葉、
聞いたことありますでしょうか?

2018年に新しい専門医として誕生。
“どんな患者さんの力にもなりたい”思いをもち、地域の医療・保健・福祉の専門職と連携し、患者さんにあった医療サービスを一緒に考える医師たちです。

目次

宮崎大学史上初
単独町での講座開設

2年4月から宮崎県都農町に、宮崎大学医学部「地域包括ケア・総合診療医学」の寄付講座が
開設されました。

単独の町村での講座は宮崎大学として初めて!全国でも珍しいケースです。

都農町の人口減、高齢化、医師不足の問題を解決するため、一体になって取り組んでます。

今後、医療を核として保健・介護・福祉、そしてまちづくりが連携した地域包括ケアの
しくみを構築していき、都農町を拠点として総合診療医の育成を行っていきます。

常勤となった宮崎大学の桐ヶ谷大淳先生䅏田一旭先生に、現状と今後の展望について話を聞きました。

患者さん一人をまるごと見る総合診療医

―町民にとって総合診療医がいることのメリットを教えてください。

(桐ヶ谷)

一つめの役割は、あらゆる健康問題に対する相談窓口です。

たとえば胸が痛い場合、まず心臓かな?と循環器科に行ったら心臓じゃない、肺の問題かな?と思って呼吸器科に行って、さらに整形外科に行って、となると大変ですよね。

まず最初に総合診療医に相談してもらえれば、できるかぎり自分の病院で対応して、専門医を紹介していきます。

二つめの役割は、継続的に患者さんを診るかかりつけ医です。

健康や予防の相談から、状態が悪くなったときの診療や専門医との連携、介護が必要になったら役場やケアマネジャーへつなぐ、人生の最終段階での相談に至るまで、一人の患者さんをまるごと、継続的に診ていきます。

患者さんをみるために、
地域をみる

―まちづくりとの関わりはあるのでしょうか?

(䅏田)

専門医(循環器や呼吸器など臓器ごとに専門性をもつ医師)を目指す人は、ここをなおさなきゃいけないと特別な専門技術をきわめていきます。

一方、私たちはなにかの臓器にすごくとがっているわけではなく、その地域の患者さんをみたいということが一番に来ます。

患者さんを見るために、その背景にある地域を知る必要がでてきます。

病気をみて、患者さんをみて、その地域をみる、と考えるのが総合診療医だと思っています。

―いま、やりたいと思っていて、できていないことはありますか?

(䅏田)

まだまだ病院内にいることが多いので病院外の人との連携をとってつながりを増やしていきたいです。

―病院外の人とどういう風につながっていくのが良いのでしょうか?

(桐ヶ谷)

具合が悪くなって病院にきた人を救う前に、禁煙指導・食事や運動・介護予防など、病気になる前にアドバイスをすることが必要です。

デジタル・フレンドリー」で
地域とのつながりを増やす

ー都農町では、「デジタル・フレンドリー」を推進していますが、総合診療医、地域包括ケアでデジタルの力を活用できることはありますか

(桐ヶ谷)

デジタル化が進めば、町民のみなさんへアプローチがしやすくなると期待しています。

病院の中だけにいると、診察に来た人にしか会えません。

病院の外に出たとしても、公民館での健康座談会のようなアプローチはできますが、来ない人たちも多いです。

タブレットを配布して、高齢者も活用できるようになれば、アプローチできる人を増やすことができます。

そのためには魅力的なコンテンツが大事になります。

(䅏田)

処方薬が書いてある「お薬手帳」を持ってこなかったり、介護のケアマネージャーからの「アセスメント評価」も紙媒体なので、いざ入院となると集めるのが大変で、限界を感じます。

デジタル化が進めば、かかりつけの先生が書いている情報もあわせて一元化して解決できると期待しています。

「健康に関する個人情報は自分で持つ」という意味のPHR(Personal Health Record)の概念をとりいれていけると、医療の現場では重宝されると思います。

―今後、やってみたいことはありますか?

(䅏田)

病院という閉ざされた空間だと、病院外とのアクセスが難しいです。

私たちが思っていることを伝えたくても「お医者さん」という壁をすごく感じます。普通の人として(笑)、情報発信していきたいですね。

(桐ヶ谷)

学生さんたちが総合診療医の仕事を理解し、憧れてもらい、一人でも多く町に総合診療医が増えるきっかけとなる動画やホームページをつくりたいです。

都農病院へ着任早々、新型コロナウイルス対応で多忙を極めました。

ただし、総合診療医がいることで、患者さんや地域とつながりが深まっているのではないかと思います。

感染者以外の入院受け入れを他の病院と調整したり、積極的に医療・保健・福祉・介護に関する多職種の専門家との連携も推進しています。

当初は予期していなかった有事対応の面でも、総合診療医がいる意味が出せているのでは?と実感しています。

これから、デジタルも積極的に活用し、総合診療医がより地域の人たちとつながり、少子高齢化や医師不足の課題を解決していけるよう、産官学医で連携を進めていきます。


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