「みんなが幸せになる“文化”を作る」今後社協が担う役割とは?

近年、私たちの生活そのものや、生活を送る中で直面する困難は多様化・複雑化しています。しかし、これまでの福祉制度・政策は「属性別」であり、複合化した課題や制度の狭間にあるニーズに応えることが困難でした。

そうした背景から創設されたのが、今回の記事にも関連している「重層的支援体制整備事業(以下、重層事業)」です。この事業では、手を挙げた市町村において、以下の3つの支援が一体的となった包括的な支援体制が整備されます。

①相談支援

(属性を問わない相談支援、多機関協働による支援、アウトリーチ等を通じた継続的支援)

②参加支援

③地域づくりに向けた支援

(厚生労働省・地域共生社会のポータルサイトより抜粋)

都農町では福祉課や社会福祉協議会(以下、社協)が主体となってこの重層事業に取り組んでいます。

今回は社会福祉協議会の次長・永友環さん、黒木史佳さん、黒木聖保さん(以下、敬称略)にインタビューをおこない、「そもそも社協ってどんなところ?」「重層事業とは?」といったさまざまな疑問にお答えいただきました。

「社協という存在は知っているけれど、実はよく分かっていない」「都農町が今後どのような町を目指しているのか知りたい」という方はぜひ最後まで読んでみてください!

重層事業を推進し、より良い都農町に

永友環さん

——皆さんは普段、社協を知らない方に対してどのようなところだと説明していますか?

環:僕は毎年福祉教育で小学校に行っていて、そのときに社会福祉協議会の説明もするんですよ。子どもたちに「『福祉』の『福』にはどんな意味があると思いますか?」と聞くと、「幸福」や「幸せ」と答えてくれます。そこで僕は「福祉も『幸せ』という意味なんですよ。社会福祉協議会は、皆さんの周りの幸せについて話し合い(協議)をするところです」と伝えています。

史佳:私も正直「社協って何なんだろう?」と思いながら働き始めたんですよ。若い世代は知らない人が多いですよね。友達から「社協って何?」「どんな仕事してるの?」と聞かれて返答に困ることもありました。昨年までヘルパー事業を担当していたので、「ヘルパーの仕事をしているよ」と伝えると分かってもらえますね。

聖保:僕は「社会が幸せになる文化を作るところです」と言っています。

——社協には“部”や“課”のようなものがあるのですか?

環:事業名で3つに分かれています。一般的な会社の総務にあたる法人運営事業、重層事業やボランティア、サロンなどを担当する地域福祉推進事業、ヘルパー事業や高齢者ふれあいセンターの運営などを行う在宅福祉事業があります。

——聖保さんは福祉課から出向されていると伺いました。そうしたことはよくあるのでしょうか?

環:2人目ですね。昨年からもう1人来てもらっています。重層事業を始めるにあたり増員が必要になったので、役場に相談して来てもらいました。

——環さんは社協に入職されて何年ですか?

環:15年です。

——15年前と現在で、社協に対する期待や位置づけが「変わってきたな」と思うことはありますか?

環:認知度という点では変化はないと思いますが、重層事業が3年ほど前から始まり、行政などからの期待を感じています。これからそうした期待に応えていきたいですね。

——どのような期待を感じますか?

環:今まではマンパワー不足などの課題があり、相談に来てくれた方にしか対応できていませんでした。でも困っている方は表面化していない状態なんですよね。今後は隠れている課題を発掘してそこに新しいしくみを作り、より良い都農町にしていきたいと考えています。それを期待されているのではないかなと思います。

黒木聖保さん

——聖保さんは福祉課に長く在籍されていますよね。そこからの視点で社協への期待・位置づけの変化は感じますか?

聖保:変化は感じませんが、都農町の社協は今「生活困窮者の対応」という立ち位置になっている気がします。三股町を例に出すと、「相談業務はすべて社協。制度上の手続きは役場」という大きな流れがあるんですよ。だから町民は何か困りごとがあったらまず社協に行きます。でも都農町は相談業務がいろいろなところに分散している状態なんですよね。

僕は社協には生活困窮者のような人が「生まれないようにする」という本質があるべきだと思っています。幸せを願い、困っている人を救う。そのためにはまちづくりとして文化をつくらないと広くは手が届かない。

それに、空き家や町営住宅などが余っているのに、快適な家に住めていない高齢者が多いんですよ。そうしたことを一つひとつ解決するために僕は社協に来たんだと思っています。

社協に向いているのは「人間に興味がある人」

黒木史佳さん

——現在一番社協を頼りにされているのはどんな方だと思いますか?

環:生活困窮者ではないでしょうか。社協では貸付を行ったり食糧を渡したりといった対応が可能なので、「福祉課に相談に行ったら社協を紹介された」という方が多いですね。お金の管理が苦手な方のために、管理を代行する「あんしんサポート」というサービスも提供しています。

——そうした方と接するときに心がけていることはありますか?

史佳:できる限り支援したい気持ちはありますが、頼られすぎるのも良くないと思うし、ある程度は「なぜこういう生活になってしまったのか」ということを自覚しつつ自立していってほしいなと思っています。私はまだ異動したばかりで「つかず離れずの距離感が難しい」と感じているので、勉強しているところです。

——すぐに解決するのは難しい課題が多いと推察しますが、支援している方がどうなったら「よかったな」と思いますか?

環:たしかに劇的に良くなるというのは難しいですが、僕たちが介入することで気持ちや経済面に少しずつ変化の兆し・転換点のようなものが現れてくるんですよね。どんよりしていた気持ちが「上向きになってきたな」と感じられたら「よかったな」と思いますね。

——史佳さんは仕事のどのようなところにやりがいを感じていますか?

史佳:社協に入るまでは福祉施設のヘルパーとして現場でしか働いたことがありませんでしたが、入職してからは担当の仕事だけでなく、福祉教育などいろいろな事業の手伝いに行かせてもらいました。それは施設では味わえない経験だったんですよね。今まで「介護=福祉」と思ってきたから、とても楽しかったんです。もしそうした経験がなかったら、こんなには続いていなかったかもしれません。

——社協にはどんな人が向いていると思いますか?

聖保:僕は「人間に興味がある人」だと思っています。いろいろな制度を理系的にパズルのように組み合わせられる人ももちろん素晴らしいし、必要だと思いますが、例えば生活困窮者の場合、問題は困窮していることではなくて、その人の性格や周りの環境などがそうさせていることなんですよね。

「困窮しているから一旦福祉資金を当ててしのぎましょう」で終わらせてしまったら、何の解決にもならない。「なんで仕事が続かないんだろう?」「なんで収入が少ないのに仕事を変えないんだろう?」というように、「人に興味を持つこと」がとても大事なんです。

福祉は困っている人だけでなく、みんなに必要なもの

——重層事業を進めていくうえで、福祉課と社協がどのような役割分担を行った町民にとって良いことだと思いますか?

環:先ほど聖保さんも言っていましたが、今は生活困窮者の相談窓口が社協、高齢者は地域包括支援センター(福祉課)、子育て世帯は健康管理センターというように、窓口がばらばらの状態なんです。今後は相談業務をすべて社協が担い、制度上の手続きを役場が行うというのが僕たちの理想です。それが実現すれば町民にとっても分かりやすくて良いことなのではないでしょうか。

——今後社協は重要なポジションを担うことになりそうですね?

環:そうですね。皆さんに知ってもらうためのPRの必要性も感じていますが、僕はあくまでも社協は“黒子”でいいと思っています。ボランティアや町民を中心とした課題解決を行いたいので、そのためのしくみを作っていくのが社協の役割ではないかなと思います。

——最後につのまるをご覧の方や都農町民へメッセージをお願いします。

環:「福祉課や社協は支援が必要な人が行くところ」というイメージがあると思うのですが、僕は福祉教育で「幸せは困っている人だけに必要なものではないですよね。だから幸せという意味の福祉も、みんなに必要なものなんですよ」という話もしています。それを皆さんにも伝えたいです。

史佳:社協にはもうどうしようもないくらいに困り果てて相談に来てくださる方が多いのですが、私はいつも「なぜこうなるまで」「もっと早く頼ってほしかった」と思うんですよ。だから皆さんにもっと気軽に相談しに来てもらえたら嬉しいです。

聖保:引き続き僕の“くだらない”けんこう日記の応援をよろしくお願いします!

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